2019年2月26日火曜日

笑而不答心自閑


問余何意棲碧山
笑而不答心自閑
桃花流水杳然去
別有天地非人間

20年にわたり、早稲田大学の学生を受け入れてくれている農村があります。それは山形県寒河江市田代集落です。
その田代集落の前区長である佐藤昭右衛門さんが亡くなられました。

私は初めて田代集落に伺った2003年から15年にわたり、昭右衛門さんのご活躍を拝見しておりました。
学生として、OBとして、引率教員として。ただの田代好きとして。

こちらの無茶な要求にも、「困ったなあ」という笑顔をして、そして工夫を凝らして私たちを受け入れてくれた、そんな昭右衛門さんの顔が忘れられません。
役場での学生の発表、早稲田大学への山形県出店の出店、ここぞという場面には常に昭右衛門さんの笑顔がありました。

私が最後にお会いしたのは昨年の8月、早稲田大学学生を受け入れる田代集落の組織『葉山村塾」の設立20周年記念式典でした。
「手術をした」「まあ、どこまでもつかね」といった話を伺ったことは覚えています。
私は愚かにも、それを術後の弱気と受け取ってしまいました。
また、次の夏に会えると、そう思ってしまいました。

人の覚悟を読み違えるほど人生の不覚はありません。

葬儀に参列し、弔辞を述べる人たちが一様に述べる「最期のお姿」が「仕事をしていた」お姿であったという事に改めて驚き、敬服しました。
昭右衛門さんはいつも笑顔で、いつも仕事をしておられました。
いつも、誰かのために、何かをしようと、そう自らを決めておられる方でした。
本当に最期まで、そのままだったのでしょう。

もう一度、せめてお別れに一目お会いしたかった。

決して多くを語る方ではなかったかもしれません。しかし、語るまでもなく、その笑顔には、桃花流水の別天地としての、ふるさと田代の姿があったように思います。
「笑ひて答へず、心自ら閑なり」。
その生涯をかけたふるさとに、多くの笑顔が生まれる場所が残されました。

私はまた、昭右衛門さんに会いに、この村へ行くのです。

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