2010年10月22日金曜日

フェリペ神父の帰天

http://www.aiko.ed.jp/school_news/2010/10/post-55.html

私が卒業したある学校の元理事長が亡くなりました。

いやしくもカトリックの神父様に対してきちんと「帰天」の表記をしないあたり、この学校が受験のための教育にすっかり堕している様が受け取れます。

・・・などと亡くなった方の話をする前に失礼なことを書くべきではありませんね。いい学校ですよ、ここは。



フェリペ神父はたしか来日されたのは東京五輪の頃だと仰っていたように記憶しています。
私なぞより、よほど「日本滞在歴」の長い方でした。

非常に巨漢でした。ある日の倫理の授業で、神父様が歩くたびに教壇がきしみ、学生はハラハラして今までにない集中力を見せたことがありました。講義直後、クラス全員が熱く授業について語りました。あれはフェリペが壊したのか、と。あのように倫理の授業について熱く語った事は15年経った今でも二度とありません。何についての授業だったかは忘れましたが。



また、とにかくお茶目な方でした。
「なぜこの学校にはプールが無いのですか?」「プールを作ると、一年入れる温水プールにしないといけません」

「なぜこの学校には野球部がないのですか?」「野球部を作ると、応援部を作らないといけません。応援部を作ると、チアガールが要ります。チアを作るには、共学にしないといけません」

どこまで真面目に言っていたのか、スペイン生まれの神父に聞くのも野暮というものですが、私の学校は、私が卒業した年に共学になりました。さらに、その後の「授業未履修問題」のごたごたで、色々と関係の皆様はご苦労されたようです。



私がフェリペ神父様と再会する機会を得たのは、大学3年の北条教会でした。母がカトリックの信者であるためです。私は、できたばかりの彼女(今の妻)を連れて、二人でクリスマスミサに車いすの母を連れて行きました。神父様にご挨拶をしました。もちろん、個人的に親しくしていたわけではありません。ですが、卒業生であることを知ると、非常に喜んでくださいました。

昨年、私たちは北条教会で結婚のミサを(非信徒なので、ご厚意で)あげさせていただきました。教導してくださった神父様から、フェリペ神父が体調が悪いという話をお伺いしたのはその時です。
こんなに早く天に召されるとは思ってもいませんでした。



私がこの学校に入学した時、母の知人でもあり、寮長でもあった、ベレー帽の似合うバスク出身のアンドレス神父。80歳を超えるお年で校長を務め、なお柔道部の指導をしていた門屋先生。今や皆さん天国に行かれました。

私が12歳のころお会いし、初めて目にした時、どの方を目にして感動したことが一つあります。それは、何事にも動じない強い意志です。

門屋先生は超人としか言いようのない方でした(病気で入院されて、握力を測ったら両手とも30を超えたらしい。当時寮内で聞いた有名な話)。引退されてからも良く校内を散歩されていて、休日などご挨拶すると必ず質問してくださいました。そして、最後の教え子である私たちの学年が卒業するまで、欠かさず卒業式に来てくださいました。

アンドレス神父は、個人的にも何度かお会いしたことがあり、私はおかげでホームシックにもならずに寮生活を過ごしました。最期の時、自分にこの試練を与えて下さった神様に感謝する、そう言って亡くなられたと聞きました(もう10年くらい前だと思うが)。



本当に、皆さん勁い意思を持たれた方たちでした。それは、これが信仰の力なんだろうと今の私は漠然と思っています。



私たちが卒業した2002年2月1日、私たちの卒業式で、フェリペ神父様は、私たちのためにミサを挙げてくださいました。香を振り、私たち卒業生の幸せを神様に祈ってくださいました。
アルバムに書いてくださった言葉は、「近くの友人は、遠くの親戚に勝る」。
全くの他人だった私たち寮生が、共に暮らし、友人になり、また同じ祈りのもとに分かれて行く。
フェリペ神父は、そんな様を、いつものように、にこやかに眺めておられました。

私たちを祝福して下さった方が、自分の信じ、愛する方の所にお戻りになった。
もしかしたら、悲しむべきことでは必ずしもないのかもしれません。
しかし、私たちを見守ってくださった方を送る私たちには、やはり大きな過去との別れの一つなのです。魂の安らかならんことをお祈りしつつ、私たちは私たちの道を歩んでいこうと思います。

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